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松本大策のコラム
中国牧場奮闘記 その19

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2015年9月14日

 日本の場合、和牛でもこの系統なら19ヶ月齢から20ヶ月齢にかけての伸びが大きい、とか解りますが、中国の牛さん(ほぼ雑種で絡んでいる系統も様々)の場合は、個体ごとに診ていくしかありません。
 それに、投資家の方々は、早く中身が見たくて仕方ないので早く早くとの催促です。僕自身、どの程度の肉質になるのか、まったく自信有りませんでしたし、このころが一番胃が痛かったです。

 牧場の指導というのは、そこで働く人たちを育てることだと僕は考えていますから、毎月勉強会を実施しました。

とは言うものの、僕の半端な中国語と、日本語のわからない従業員です。なかなか意味も発音も通じませんでした。でも次第にお互い現場の人間ですから、少しずつ伝わるようになっていくのは感動でした。

 導入後1年くらいで(中国では14ヶ月齢くらいの牛を導入して2ヶ月間肥育するのが通常の肥育ですから、これでも長いと思われていたのです)、もっとも発育の良い牛さんを試験屠殺して肉質や食味の確認をしました。このときは和牛になれている日本人も6人、試食していただきました。

 その当時は現在のような自前の食肉処理工場もありませんでしたし、配送センターもない頃で、地元の食肉処理場に依頼したため、温屠体でした。はじめて温屠体を見たので「うわ、しまり悪っ!」というのが強く印象に残っています。しかし、クライアントの経営するお肉屋さんで加工した後は、「お?意外といけるんじゃない?」という感想に変わりました。ただ、お肉の印象から、もう少し肥育期間が必要な牛(といってもあくまでこのタイプの雑種では、ですが)だと感じました。


 試食会で焼いて、みんなで味見をしたときの記憶は未だに消えません。一口食べた後、みんな黙り込んだので(僕はまだ食べる心の余裕がありませんでした)、「あーあ、ダメだったかぁ」と落ち込みかけたとき、日本人から「本当に中国の肉?」という言葉が聞かれました。その後は、味がとても良いという評価がたくさん出ました。特に臭みがなく、旨味が強いのに、いくらでも食べられる、という評価が高く、ようやく僕も一口食べました。厳しく言うと、「もうひと味乗っていないな」というのが正直な感想でしたが、みんながとてもこの事業に乗り気になっていたので「次のロットは、必ずもう少しマシな味にできると思います!」と伝えました(いつもこれで自分にストレスをかけるのですが、性分なので仕方ないですね)。

 枝重は400kg程度でしたので、推定月齢から後数ヶ月延ばして試験をすることにしました。

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