(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
「第89話 「嗚呼、心雑音・・・」」

コラム一覧に戻る

2008年6月19日

 今回は肥育牛の心雑音について書いてみようと思います。この心雑音には心内雑音と心外雑音の2種類があり、心内雑音は心臓の房室弁や半月弁の閉鎖不全や狭窄により血流の異常がおきることで妙な血液の流れる音が聞こえます。これには疣贅性心内膜炎のようなものもあります。心外雑音は心嚢内に滲出物が蓄積し繊維素が沈着することで異常音が聴こえます。代表的なものに創傷性心膜炎があります。ここでこれらの音を表現したいのですがなかなかうまく表現できません。残念ながら肥育牛の臨床現場では心電図や心音図ははるか彼方の世界のものなのです。しかしあえて小生の超独断と偏見で代表的なその音を表現いたしますと、心内雑音は「ドックン」の心音のどこかに程度の差こそあれ異常音が入り込みます。たとえば「ドックシュン」「ドシュクン」などなど。心外雑音は心臓の拍動にあわせて「ドックン、ドックン」ではなく「ブオ、ブオ」などと繊維素がすれるような音がします。さらにひどくなり第86話のようになるとまったく心音が聴き取れません。確実に聴こえるはずの心音がまったく聴こえず恐ろしいほどの静寂があります。音を表現するのは難しいとわかってはいましたがやはりちょっと無理がありましたね(笑)。ただとにかく心臓を聴診していていわゆる「ドックン」の音以外のすべての音はほとんど確実に何かの病的所見です。その牛さんを今後どのようにしていくのか・・・・。様々な条件を考慮して予後判定をしなくてはいけません。
|