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池田哲平のコラム
「牛の解剖49: 第一胃(5) ~第一胃乳頭~」

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2010年8月20日

 ウシの第一胃粘膜を顕微鏡で見てみると、第一胃乳頭の発達の様子がよく分かります。前回紹介したように、第一胃乳頭は筋柱では発達していません。その他では第一胃の背中側の一部でも筋柱は発達していませんが、それ以外の粘膜面はすべて第一胃乳頭に覆われています。
 第一胃乳頭の個々の形や大きさは様々で、背が低い円形で突起状のもの、円錐形で舌状になったもの、平らな葉のようになったものなどがあります。このような形の違いや背の高さの違い、分布の密度というのは、前々回紹介したとおりウシの食餌内容によって変化します。よく発達した第一胃乳頭によって第一胃粘膜面はその面積を拡大させることができ、VFAの効率のいい吸収に貢献しています。

 今でこそ一般的になったこのような話ですが、以前は、第一胃や第二胃の粘膜面の乳頭は、ふやかされた胃内容物の機械的破砕のための適応と考えられていました。獣医学の基礎的な研究が、今では臨床現場で誰もが知るくらいの一般的な話にまでなっています。研究と言うととても難しい話のように感じますが、全ては、程度の差はあれ、身近なことに応用するために行われているのです。

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