2019年10月10日 シェパードでは獣医師を募集しています * * * * * * * * * 台風19号の今後の影響が非常に気になります。自然災害への備えというものは、本当に牧場での必須事項ですね。 BRDC検査の中に含まれているマンヘミア・ヘモリチカという細菌があります。この細菌には何種類か血清型があります。その中でも特に1型と6型の毒性が強いと言われています。今日本で問題になっているマンヘミアはほとんどが1型で、最近6型が少し増えてきています。今回シェパードで行った検査ではマンヘミアは8頭陽性。陽性率は26.7%なり。全体では陽性率が20.2%になります。今までの小生が知っている情報ではもう少し陽性率が低かったように思うのですが、今回の結果と全体の結果を見て陽性率が意外と高いという印象をもちました。ほとんど検出されない事例も結構あったのでちょっと驚きました。 マンヘミアの特徴は強力な毒を出すことです。この細菌はLKT(ロイコトキシン:Leukotoxin)という菌体外毒素を作り、この毒で白血球を攻撃します。この毒で攻撃された白血球が破壊されると、壊れた白血球の中にあるライソソームという細胞内の器官から消化酵素が放出され、肺組織を破壊し、肺炎が増悪するとも言われています。肺を守るための白血球が壊れて肺を破壊するなんてなんだかちょっと寂しいですね。マンヘミアで死亡した子牛の解剖を実施すると、それはもう肺が酷い状態になっています。胸膜炎を併発している事例も多いです。 しかしですね・・・・このマンヘミア、たくさんの薬剤感受性試験を見てきた結果、あくまでも小生の見た範囲ですが、意外と抗菌薬の感受性があります。しっかりと戦える抗菌薬が結構あります。なので、マンヘミアの単独感染はそこまで怖くないという意見もあります。一番問題なのはIBRとの混合感染やマイコプラズマ・ボビスとの混合感染になります。ただ、IBRはシェパードでの今回の試験では陽性率0%、全体でも0%と発生率は非常に低い傾向があるので、そこまで心配しなくていいかもしれません。IBRはワクチンもありますし、市場に上場する牛さんへの接種義務がある県も多いことから接種率も結構高いです。それよりもなによりも、マイコプラズマ・ボビスとの混合感染が超重要です。マイコプラズマ・ボビスはマンヘミアが肺に傷害を与える先行因子や増悪因子であると言われています。マイコプラズマ・ボビスとマンヘミア。この二つが混合感染するとメチャクチャ肺炎が悪化します。おまけにマイコプラズマ・ボビスは薬剤耐性が一部で進んできています。やはり基本はマイコプラズマ対策につきると思います。 ただ、マンヘミア対策にとってうれしいことにこの細菌にもワクチンがあります。ワクチンを投与することでマンヘミアの増殖抑制ができることと、LKTを中和することができます。重症肺炎が多発するところでは、マンヘミアのワクチネーションを検討することは非常に重要なポイントだと思います。できればパスツレラもワクチンで抑えたいです。小生は大規模牧場でこれらのワクチンを投与しない選択肢はないとさえ思っています。是非ともワクチン接種を検討してもらいたいですね。重症肺炎はとにかくありとあらゆる面でいいことは一つもありません。断言します。100%予防できるわけではありませんが、少しでも予防できるものは予防しましょう! 今週の動画「牛の保定法 5 restraint of cattle’s head 5」 前の記事 第587話:BRDC病原体の検査について その13 | 次の記事 第589話:BRDC病原体の検査について その15 |