(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第585話:BRDC病原体の検査について その11

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2019年9月19日

シェパードでは獣医師を募集しています
 シェパードでは、関東地区の獣医療が不足している地域を支援するため、栃木県那須塩原市に支所を設けることにいたしました。2020年の4月に開設する予定です。経験、未経験は問いません。シェパードで研修後、現地勤務となります。募集内容は こちら から。

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 鹿児島の日中はまだ暑いですが、朝晩は少しずつ涼しくなってきました。寒暖差が大きくなってきているので、体調管理をしっかりとしていきたいですね。
 
 マイコプラズマ・ボビスの対策。本当に難しいですよね。前回対策が難しい理由としてワクチンがないことを原因の一つとしてあげましたが、もう一つ重要なポイントがあります。それは薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)の問題です。あくまでの小生の知っている範囲の話ですが、マイコプラズマ・ボビスはかなり抗菌薬に対しての耐性が進んでいると思っています。鼻腔スワブやBALFのデータを本当にたくさん見てきましたが、場所によってそれはもう惨憺たる結果になっているところもあります。ほとんど薬が効きません。マイコプラズマ性中耳炎や肺炎は抗菌薬に感受性があっても簡単には治りにくい疾病です。そこに耐性ができてしまうと、とてつもなく厄介です。現場としては、ワクチンがないことと、耐性菌が出来ていることを踏まえて対策を取らなくてはいけません。小生は最終的には飼養衛生管理を徹底して、治療がなくなる状態を目指すべきだといつも考えています。これしか打開策はないと現状では思っています。

 では、どうすれば良いのか。

 まず、定期的に牧場内にマイコプラズマ・ボビスが存在するかしないかを鼻腔スワブを用いてモニターする必要があります。検査頻度に関しては牧場の規模によると思いますが、徹底してマイコプラズマ・ボビスが検出されない状態を目指すべきだと小生は考えています。明らかに陽性率が高いと中耳炎・肺炎の発生率は上がります。ここで注意すべき事は、必ず陽性率0%を目指すことです。1頭でも陽性がいたら簡単に牧場内にマイコプラズマ・ボビスは広がります。また、陽性がいるという事はどこかで感染がおきていることになります。そこの問題を徹底的に追及して改善していく必要があります。多くの牧場を見てきて思うことは、ほとんどの牧場が行っている衛生対策では、マイコプラズマ・ボビスの水平感染を防ぐことはできないという厳しい現実です。いろいろ見ていると、これではとてもじゃないけど、感染の広がりを抑えることはできないと感じることが多いです。今まで以上にレベルを上げた衛生管理方法を構築する必要があります。

 しかしですね・・・・・・

 病気が多発して苦しんでいる牧場スタッフのみんなや、農家さんたちはもちろん何とかしたいといつも思っているのです。ただ、どうしようもない現実がそこにはあります。とにかく毎日の業務をこなすので精一杯。とてもじゃないけど、そこまで手が回らない。スタッフの募集をしても全然人が来てくれないし、来てくれてもすぐに辞めちゃう。そして現場のスタッフが疲弊していく・・・・。本当に大変です。

 「蓮沼先生が言う事は良くわかるよ。でも、とてもじゃないけどそこまで手が回らんのよ!!」

 小生は沢山の牧場を見てきましたが、あまりの忙しさに現場が火を噴いている状況に何度も遭遇しています。それはもうしっちゃか、めっちゃか。とてもじゃないけど、飼養衛生管理の向上など夢のまた夢なり。

 牧場のマネジメント

 まずここが最初に取り組むべき最重要ポイントのように思います。

 次回はこのような状況の中でのマイコプラズマ・ボビスに対する、さらなる対策について紹介してみますね~~。

今週の動画「牛の保定法 2 restraint of cattle’s head 2」

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